キングオブパスタ

COLUMN

KING OF PASTA 2024

パスタ人生をかけた渾身の一皿!キングオブパスタで大活躍の市内名店が語る高崎パスタ

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2024年03月28日

お店の未来を左右する、高崎パスタ一本勝負 

 
高崎パスタの頂点を決めるキングオブパスタ。毎年多くの出店者から応募があり、出場する店舗は渾身の一皿を会場で振舞います。群馬県産食材を使った創作パスタは開催後の一定期間それぞれのお店で提供されることになっており、イベント当日以降にも楽しめることが特徴です。「今年のキングオブパスタになった高崎パスタを食べたい!」と県外から来店される方も多く、キングオブパスタの称号はお店の売上に大きな影響を与えています。

 
前回のコラムでは高崎パスタを愛する有志の手で立ち上がったキングオブパスタの歩みをお伝えしました。今回はその高崎パスタの立役者である市内のパスタ店の方々にお話を伺います。入賞常連の6店舗の皆さんへ、キングオブパスタ出場へのきっかけや感想、それぞれの高崎パスタへの想いをお聞きしました。

 

 

お話を伺った方々(写真右から)

■ 小板橋 浩一 様
・カーロ 本店
■ 関崎 晴五 様
・シャンゴ 本店
■ 金井 伸光 様
・ソリッソ
■ 新田 員也 様
・高崎リングロード
■ 上原 祐二 様
・バンビーナ 筑縄店
■ 大木 祥照 様
・ボンジョルノ 本店

 

各店の個性が光る パスタ店激戦区の高崎市 

 
⸻ キングオブパスタ入賞常連の6店舗の皆さまにお越しいただきました。まずは各店舗のご紹介とキングオブパスタの出場歴や出場のきっかけをお教えください。

 
小板橋さん 高崎市連雀町と高崎髙島屋に店を構える「カーロ」です。料理と空間・時間を楽しめるお店として、パスタに限らずイタリアン全般を提供しています。第四回が初出場で、結果は2位。翌々年の第6回に初優勝をさせていただき、今までで3回優勝、5回入賞しました。

 
関崎さん 高崎市問屋町に本店を構える「シャンゴ」です。市内外に店舗は8店舗、群馬県内でも老舗のイタリアンレストランです。キングオブパスタには第一回から出場していて、第二回に初優勝し、今までで2回優勝、4回入賞しました。初回は「とりあえず参加してみようか」という気持ちで参加したんですが、お店とは違ったお客さまからの熱意を感じられるイベントの雰囲気に魅力を感じ、今まで応募を続けています。

 
金井さん 「アルコバレーノ」として第三回、「ソリッソ」として第十四回に優勝を経験させていただきました。キングオブパスタに参加したきっかけは、多くのお客さまにお店を知ってほしかったからです。お店がスタートしたばかりで忙しい時期でしたが、実行委員会の方々の熱意に背中を押していただきました。

 
新田さん 高崎市筑縄町の「リングロード」です。初出場は第一回、「ラビッシュ」として出場して2位をいただきました。準優勝店舗に選ばれたことが影響して、翌日からお店が急に忙しくなったのを覚えています。以降、お店のスタッフと相談しながらキングオブパスタに出場しています。

 
上原さん 高崎市筑縄町の「バンビーナ 筑縄店」です。高崎市田町にあった屋台村こと「恋文横丁」でお店を出していた時にお声がけいただいて、第二回に初出場しました。当時は商売を始めたばかりで、一日のお客さんが数組のお店だったので、数千食数百食も出すキングオブパスタでは木端微塵にされましたね。ただ、その日の経験があったからこそ、改めて料理と向き合うことができました。諦めずに出場を続け、第五回のキングオブパスタで優勝することができました。

 
大木さん 高崎市筑縄町に本店を構える「ボンジョルノ」です。1982年にオープンし、高崎市内に4店舗、前橋市に1店舗を運営しています。副社長から誘われて第一回に参加したのがきっかけですが、幸いにも第一回の大会で優勝することができ、今までで2回優勝、5回入賞しました。

 

 
⸻ キングオブパスタで優秀な成績を多数収めてきたお店の話をお聞きできる貴重な機会にワクワクしています。皆さんは複数回キングオブパスタに出場されていますが、初出場時の印象はいかがでしたか。

 
大木さん 初めて出場した屋外イベントがキングオブパスタだったので、調理方法を工夫するのが大変でした。特に初回は仕込みの計算が難しかったです。

 
上原さん 慣れてないと盛り付けの量がわからなくなりますよね。普段の営業とは違う食数を出すので、毎回仕込む数量に頭を悩ませています。

 
小板橋さん そうそう。計算しても、他店舗の量をみて調整していくとボリューミーになってしまったりするんですよ。初期のキングオブパスタでは大盛りのお店が多くて、早めに売り切れるトラブルもありました。

 
大木さん あとは他のイベントに比べて、すごく忙しいのも特徴だと思います。来場者が多いので、提供スピードの速さも求められますからね。出店者としては、キングオブパスタのお客さまからは特有の“圧力”を感じるというか……。

 
上原さん ブースに並ぶお客さま全員がこちらを見ている中で作るので、なるべく早く提供しなきゃと思いますよね。お客さまの食欲と審査をしている真剣さからも、確かにプレッシャーを感じるイベントです。

 

 
⸻ キングオブパスタは出店者もお客さまも真剣勝負の場だということが伝わります。出場してみて、その後の反響はいかがでしたか。

 
関崎さん キングオブパスタはイベント当日も大変ですが、翌日以降もすごいですね。出場店というだけで、翌日朝から開店待ちの行列ができますよ。

 
上原さん そうですね。イベント後の営業日には、キングオブパスタが載った新聞を片手に来店してくれるお客さまもいます。やはり大きな影響があるイベントだと実感しますね。

 
小板橋さん 賞を獲った翌年のキングオブパスタでは、開場から多くの方がブース前に並んでくださいます。その光景を見ると、キングオブパスタに来場されるお客さまの期待の大きさを感じますね。各店舗も研鑽を積んで出場していますが、お客さまの求めるレベルも上がってきていると思います。

 

 

出場メニュー開発に向けた挑戦と苦労 各店舗を支えるスタッフの力

 
⸻ イベント当日までの準備、特にメニュー開発は各店舗の皆さんが最も力を入れているところかと思います。こだわりや工夫している点をお聞かせください。

 
関崎さん 当店にはメニュー開発のチームがあり、開発チームのメンバーがそれぞれ思う「高崎パスタ」を目指してメニューづくりをしています。だから“イタリアンの王道”ではないメニューも取り入れますよ。シャンゴとして、どう“高崎パスタらしさ”を出せるか……お客さまに「面白い!」と思ってもらえるような、遊び心満載で作るようにしています。

 
大木さん お客さまがパスタを食べた時に「ああ、ボンジョルノだね」と分かってもらえる味を目指してメニューを作っています。その後の営業でも続けて出せるメニューになるよう気を付けながら、今の自分たちが自信をもって「美味しい!」と言えるパスタを提供しています。

 
⸻ たくさんの試作の中から「このメニューでいこう!」と決めるのは難しそうです。出場メニューの決め手になるポイントは何でしょうか。

 
金井さん プロの意見だけではなく「お客さま目線」を大事にしているところでしょうか。僕たちが美味しいと思って作っても、お客さまの反応がイマイチな時もありますし、その逆もあります。そこで、メニュー決めの時にはスタッフやスタッフの家族を呼んで試食してもらい、投票で一番評価が良かったものを出しています。歴代優勝メニューを見ても思いますが、やはり「ただ美味しい」だけじゃない“食べたい気持ちをくすぐる要素”が必要なんだと思います。

 

 
小板橋さん 回を重ねるごとにキングオブパスタ出場メニューが増えていくので、今までのパスタと被らないアイディアを探すのは大変です。ただ、入賞年のメニューほど、小細工なしでスパっと決まるんですよね。賞を獲れない年は味や具材の微調整を一週間前まで色々いじったり……やはりメニュー開発は難しいですね。

 
⸻ 「屋外イベントで提供するパスタ」であることも、開発の難しさの一つかと思います。

 
上原さん 開催は毎年11月の寒い時期。列に並んでパスタを揃える時間が経っても美味しいパスタを目指して、食感や風味を保てる調理法の工夫をしています。屋外イベントなので衛生面にも一層気を付けなければならず、どこまでチャレンジできるかというのは毎年難しいところです。バンビーナのベースのソースやスープにどんな味や要素を足し引きするか、前日まで「これでいいのか?」と葛藤しながら参加しています。

 
新田さん やっぱり、イベントで食べるパスタと店内で食べるパスタは違いますからね。うちはイベント用とイベント後に店舗で出すレシピは少し変えています。メニュー開発のこだわりは、自由な食材と調理法で作ることと、スタッフの意見を取り入れることです。結構スタッフの皆が前のめりに色々とアイディアや希望を出してくれるので、それをメニューに組み立てるのが俺の仕事なんですよ。

 

 

キングオブパスタが繋ぐ新たな出会い
「パスタのまち 高崎」を盛り上げる飲食店同士のつながり

 
⸻ スタッフの皆さんと力を合わせて各店舗が作り上げる、渾身の一皿。これまでのキングオブパスタで、印象に残っている瞬間や優勝時のエピソードなどを教えてください。

 
小板橋さん 優勝して、片付けをして。お店の前に帰ってきたとき、同じ商店街の方々が「おめでとう!」と喜んで迎えてくれたことが印象に残っています。今まで「料理を通じてお客さまに喜んでいただく」ことはあっても、「身内やご近所の方に喜んでもらう」ということはなかったので、すごく嬉しかったですね。参加して一番良かったことかもしれません。

 
関崎さん 俺も初優勝の時には、お店に戻ってきた時に先代シェフが迎えてくれた記憶がありますね。先代はイベントが苦手な人だったんですが、優勝したことが嬉しかったのか、メンバー皆とハイタッチしてくれました。……恥ずかしかったのか、俺とだけはしてくれなかったですけどね。お店の反響はすごかったですよ、翌日からお客さまの入り方が尋常ではなかったです。

 

 
金井さん やっぱり優勝の反響はすごいですよね。朝から店前に人が並ぶほどの影響があり、あまりに忙しくて急いでスタッフを募集しました。お客さまからは「キングオブパスタで優勝するまでお店があることを知らなかった」と言われることも多くて、出場したかいがありました。

 
⸻ スタッフの方やご近所の方からの反応、そして新たなお客さまとの出会いがあったんですね。キングオブパスタに出場することで、お店の内外に大きな影響があることが伺えます。

 
上原さん 僕のお店はキングオブパスタに育ててもらったと言っても過言ではないほど、大きな影響がありました。初優勝時は「バンビーナってどこのお店?」と会場がざわつくほどの知名度。僕が驚きながら表彰台に上がると、優勝すると思っていなかったのか奥のテントで片付けをしていたスタッフたちが慌てて駆けつけてくるのが見えた……という思い出があります。その後は皆さんが言うように、急にお店が忙しくなって、ちょっとずつお店が成長していき、今では多店舗展開やコンビニでのメニュー化なども実現しました。今も年に一度の真剣勝負にワクワクしながら、お店を続けています。

 
大木さん 第一回のキングオブパスタは、当店にとっても大きな意味がありました。当時はバブル崩壊後のイタリアン低迷期、お客さまが少なく困っていた時でした。しかし、キングオブパスタで優勝したことがきっかけとなって、雑誌やTVなどのメディアに取り上げられ、一気にお客さまが増加。すごく助かりました。今でも優勝時のメニューは人気で、長期休暇には優勝メニューを求めて県外から来店されるお客さまもいます。

 

 
⸻ 各店舗にとって、キングオブパスタはお店の未来を変えるような存在のようです。また、それぞれのお店の規模やスタイルは違いますが、お話の様子から“高崎パスタを巡るライバル・仲間”といった雰囲気も伝わってきます。

 
新田さん そうですね。キングオブパスタに出て良かったことの一つが、出場店舗の皆さんと知り合えたこと――仲間だ、と思えたことだと思います。忘れもしない、出場一回目。僕らは手描きのロゴTシャツとハチマキで参加して、他の出場店舗へ挨拶に行ったんですよ。どのお店も知らない人ばかり、皆さんがカッコよくコック帽子を被っていてドキドキしました。しかし、入賞した時には「お疲れ様でした」と声をかけていただいて、出場して良かったなと思ったんです。お店同士の横のつながりができたことも含め、今のお店を続ける力になっています。

 
関崎さん 「パスタのまち 高崎」と言うからには、一店舗だけ頑張っても意味がないですよね。皆で街を盛り上げていくことが大事なんだと思います。

 
小板橋さん キングオブパスタに参加していなければ、こうして皆さんと話をする機会もなかったかもしれません。もちろん、キングオブパスタで優勝することが“一番”とは思っていませんーー皆さんと協力して更なる高みを目指し、高崎パスタの“先”を追いかけていきたいです。

 

 

市内飲食店が考える「高崎パスタ」とは何か 未来のパスタのまちに想いを馳せて

 
⸻ キングオブパスタが始まり、15周年。改めて、地域に根付き愛されてきた「高崎パスタ」とはどのようなものなのでしょうか。

 
大木さん 宇都宮の「宇都宮餃子」と同じく、「高崎で営業するお店が提供する、全てのパスタの総称」だと思います。

 
全員 そうですね!

 
関崎さん 付け加えて言うならば、皆さん「お気に入りのパスタ店」や「お気に入りのパスタメニュー」ってありますよね。それが高崎のお店にあるなら、それがあなたの“高崎パスタ”だと思いますよ。

 
⸻ 高崎のパスタ文化を担う飲食店として、未来の高崎パスタはどうなっていくのでしょうか。皆さんが思う高崎パスタの“先”がありましたら、ぜひお話ください。

 
上原さん 先ほどの「高崎パスタって何?」という話は、よく聞かれる質問です。今後、高崎パスタの説明や市内の飲食店をまとめた冊子があったら面白いかもしれません。高崎パスタを盛り上げたいお店同士が協力して、ブランドの価値を高めても良いですよね。お客さまに高崎パスタを巡っていただいて、楽しんでほしいと思います。

 

 
小板橋さん あとは高崎パスタというと「量が多いこと」や「スープパスタがあること」に着目いただくことが多いですが、それ以外にも色んなパスタがあることを知ってもらいたいですね。最近は原材料の高騰で悩む飲食店も多いので、高崎パスタとして何か取り組めることがあればいいんですが。

 
大木さん 高崎パスタの優勝メニューを学校給食で出すなど、子どもたちが高崎パスタをソウルフードとして親しむ機会を作れたら面白いですね。

 
関崎さん それから、市内にはまだまだ、キングオブパスタに出場していないパスタ店・飲食店が多くありますよね。各店、色々な事情があると思いますが、さらにたくさんの仲間に協力してもらうことで、今より力強く高崎パスタを発信していきたいです。飲食店同士の関わりの場の一つとして、キングオブパスタにも根気よく誘ってみようと思っています。

 
 
市内の名店が語る、高崎パスタへの想い。キングオブパスタの実行委員会だけでなく、飲食店をはじめとする地域の様々なプレイヤーが高崎パスタを育んできたことが伝わりました。

だるま
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